<アスガルド 神の巫女>

第一幕

第四章 ディグバンカー前の出来事



第五話 雨上がりの空に


「散々な目にあった…」
すっかり晴れた空の下。
ルロクスがげんなりとした顔をして俺の後ろを歩いていた。
リフィルさん特製、肉の調味料を大量に摂取して倒れるなんて…普通ではありえない状態になったルロクス。
介抱しようにも、解毒剤も持っていなかったため、何も出来なかった。
一応、二人の毒らしき状態は数十分で回復し、二人とも起き上がることが出来るようになった。
よかったと俺とルゼル、ミーとルゥの四人がほっとしたとき、ディグバンカーの入り口が徐々に明るくなっていく−−−
外から光が差し込んでくる…そうか、雨があがったんだ。
大丈夫かなと体を支えてやると、大丈夫といって二人はのろのろと外へ向かう出口へと歩いていく。
光り輝く雨上がりの空を見上げ、二人は呟いた…
「生きてて…よかった…」
その言葉は、二人が今思っている気持ちのすべてだったんだろう…
遠い目…というか虚ろな目をして空を見上げていた。
そして今、ラズベリルとポンのミーとルゥの三人と別れ、俺たちは当初の目的地であったミルレスに向かって歩いている。
そういえば別れ際、ラズベリルはなぜか、さっき倒れた原因であるリフィルさん特製、肉の調味料を少しもらっていった。
『どこかでつかえるかもしれないから。』だそうだ…
こんな怖いもの、どこで使うんだ…??
それよりも何よりも、リフィルさん…一体何を原料にあの調味料を作ったんだ…??
倒れたわけではなかったが、俺もルゼルもあの調味料使って肉を食べたわけだし…
…もう、忘れよう…
考えても恐ろしいとしか思えなくなる想像を、俺はすぐに打ち消した。
地面は雨に濡れてぬかるんではいるものの、ほとんど素足状態で歩く俺でも、支障なく歩くことが出来る程度の土具合だった。
このあたりは水はけがいいのかもしれない。
木の下には雨粒に耐えられなくて傾いた草が、光を浴びて力強く伸びあがろうとしている。
雨が上がった今、とても晴れやかな気分だが、そうのんびりと歩いているような場所じゃない。
確かここは剣を持ったカプリコがたむろう場所だったはず…
雨があがって、今まで避難していたモンスターたちが再び森の中へ出てくることだろう。
「ルロクス、大丈夫か?」
ルロクスの体調を気にして声をかけると、ルロクスはぱたぱたと手を振って答える。
「一応、毒抜けたみたいだから大丈夫だぜ。
何となく体が鈍いけど、歩く分には問題ねぇぜ〜」
「それなら歩くペースを速めるぞ?」
「おうっ」
「はいっ」
二人がにっこり笑い、俺は先頭に立って歩こうとしたその時だった。
横の木の陰から不意に気配が現れた。
「!」
慌てて俺は身構えたが、その気配はモンスターではなかった。
空の青のような色の髪。
胸に十字架のデザインが施されたダークグレーの法衣。
「…っ!」
その女性の瞳は、冷めた孤高の光を湛えていた。