『きゃああああっ!』
何かが起こった!
俺はその声の元へと駆けつけるべく、とっさにフロアへと入るとダンスフロアにいた者に目を向けて−−
−絶句した。
赤いマントを肩にかけ、白い、ツバのある帽子を被り、片手は鞭、足からは青白い霊体のようなエネルギーのようなものを吐きながら、ゆらゆらと移動するモンスターがいたのだ。
もうそこにはすでに幾人の騎士団らしき人たちが駆けつけており、モンスターと応戦している真っ最中だった。もちろんその中に涼嵐さんとクウさんの姿もあった。
「ジルコンっ!」
ルロクスが慌てて俺の姿を見つけて駆け寄ってくる。
「他の人を安全な場所へっ!」
「お、おうっ!」
ルロクスにそれだけ言うと、俺は涼嵐さんのいる場所まで走った。
『遅れました』と謝ると涼嵐さんは『ウム』とだけ言う。その間も稲妻のような連続突きを繰り出している。
クウさんも瞬撃を繰り出し、モンスターの目標が一人に集中しないように技を繰り出している。
他の騎士も涼嵐さんやクウさんには劣るものの、技を繰り出し、モンスターにダメージを当てている。
俺もその中の一人である。
気を拳に集中させ、熱を発生させてダメージを増加する『炎の拳』を繰り出し、モンスターへと打撃を与えている。
そんな俺たちの攻撃に耐えられなくなったのか、すいっと移動を始める。
「全員、四方を固めろっ!」
クウさんの声に騎士たちはモンスターの四方を固めるよう移動を始める。だが、モンスターはゆらりゆらりと移動するため、なかなか四方を固められない。その時だった。
「マジシャンスローっ!」
後方で聞こえた声。
目の前のモンスターは何か錘がつけられたかのように移動する速度がみるみる遅くなる。
スペルか…もしかしてっ!
振り向くとそこにいたのは背の高い女性の姿が−−−
騎士の中から『おおおっ!』と声があがる。
だが、移動が遅くなったとはいえ、モンスターは鞭をひらめかせる速度は変わらない。
そこで、同じモンスターがもう一体、何処からか出現した。
「なにっ!?」
誰かの声があがる。
2体を相手にするとは思っていなかった俺たちは思わず、新しく出現したモンスターへと皆、目標を変えてしまった。
その隙を狙って、今までいたモンスターは目標を変えた。
そこにいた弱い者へと攻撃を繰り出そうとする。
弱い者−−−それは逃げ遅れていた水色のドレスを着たお姫様と御付きの少女だった。
モンスターの鞭がしなった。
「きゃあああっ!」
御付きの少女はそう叫んでお姫様に縋り付き、身を守ろうとする。
「ちぃっ!」
俺と涼嵐さんがその少女達を守ろうと走りだす。
だが、モンスターの出す鞭の早さには敵わない。
彼女達へと攻撃が迫る。
攻撃を止められないのかと悔やんだとき、その声はフロア中に響いた。
「ハリケーンバイン!!」
突如、風が巻き起こり、モンスターの鞭がその強力な風によって速度が変わった。
その声の主は…お姫様?!
水色のドレスを着たお姫様は手のひらを空にかざしている姿が見える。
放ったスペルの力によって、彼女達に到達するモンスターの鞭をわずかに遅らせることができた。
だが、まだ鞭は彼女達に迫っている!!
ばしぃぃん…
部屋中に鞭の音が響いた。
「だっ!大丈夫ですかっ?!」
俺にそう問い掛けてきたのはお姫様だった。
そう、俺はすんでのところで敵とお姫様たちの間に割り入って、モンスターの鞭を腕で受け止めたのだ。
俺は無言でこくりと頷くと、俺の腕に鞭が巻きついている状態のまま、モンスターに一撃を放った。
鞭を固定しておけば、もうふらふら移動できないはずだ!
涼嵐さんも駆け付け、二人で少女たちを守りながらモンスターを叩く。
クウさんも新たに現れたモンスターに一撃を放っていた。
そんなクウさんの横で、いつの間に参戦したのやら、りっぷさんも同時にモンスターを叩いた。
りっぷさんと俺の気合の声は同時にあがった。
「お〜りゃ〜!大地の怒りぃ〜!!」
「っせいっ!炎の拳っ!」
『ぐぎゃあおおぅ…』
両方の場所でモンスターの悲鳴が上がり、モンスターが崩れ去っていく…
…たお…せた…?
「皆、お疲れ様。」
涼嵐さんが槍を片手に持ち変えながら言うと、他の騎士たちから安堵の声があがった。
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