「元々は仮面舞踏会だったらしい。」
涼嵐さんは続々と入ってくる人たちを見やりながら、そう言った。
フロア中央にはダンスをするだろう場所が。そしてそれを囲むように料理の並べられたテーブルが点在している。
華やかな雰囲気、あでやかな内装。そして所々に置かれている美しい品の数々は、このルアスの街、アスク帝国の栄華を誇っていることの象徴であると言ってもいいだろう。
そんな豪華な部屋に入ることは初めてだった。
もちろん、この城に入ることも初めてなんだけど…
入るとき、あまりにもカチコチだったもんだから、涼嵐さんに『そんなに固まらんでも…』と笑われたりもした。
そして今、俺はようやくその雰囲気になれてきたところだった。
「もうすぐ始まるな」
涼嵐さんは懐中時計をちらりと見ながらそう言う。
その時、吟遊詩人たちは一斉に楽器を手にした。
ハープとギターの音色が流れ、太鼓がドンドンと響いた。
少しの演奏の後、ぴたりと曲が止む。
「このルアスの城へようこそ!
さぁ時間です!今日は皆さん、楽しんでいってください!」
フロアにいた若者らしき人が大声で言ったと同時に音楽が再び流れ出す。
ワルツだろうか。
優雅な曲が部屋中に広がった。
「仮面舞踏会が根本にあるから、マスクは被るというのは変わらないが、
格好はまちまちになったらしい」
『見てるとわかるでしょ?』と言われて、俺は頷いた。
俺の立つ位置から見えるフロアで踊っている人たちは、実に様々だったのだ。普通のドレスの人もいるが、夏のラフな服を着ている人もいる。サンタの服を着ている人や、グリーンギアの帽子を被ったタキシード姿の人、ビックマレックスの仮装をしている人とマレックスの仮装をしている人たちが踊ってたり、カレワラに住む魔女だろう黒い服を着た人もいる。
ほんとばらばらで…
「見てて楽しいなぁ〜パーティって初めてだからさ」
ルロクスは俺の隣でぼんやりとフロアを見やりながら『イリィも連れて来ればよかったなぁ』と呟いていた。
ほんと、見ていて楽しいパーティだ。
そんなパーティにいるわけだから、無論、俺たちもその場に似合った格好をしているわけである。
俺はオーソドックスに白いタキシードを着ている。ルロクスは黒い髪に黒いタキシードでとても似合っている。
で、今俺の横にいる涼嵐さんはというと−−−
「それ、騎士服ですよね…?」
「ウム。レベル低い騎士に仮装してる。」
「それって仮装って言うんですか…?」
そう思いながら、入り口のドア辺りを見るとそこにいたのはクウさんだった…が、
「クウさんも…レベル低い服着てる…」
確かアレは…どう考えてもレオタードな…修道士の胴着…
「クウさんもその格好?」
「もちろん。これが正装だから。」
男物レオタードのどこが正装なんだか…しかもぴっちぴちだし…
クウさんが涼嵐さんに『いいでしょこれ』とポーズを決めながら見せている。
何となくそばにいるのが恥ずかしいなぁと思い、ルロクスがどこかにいくようだったので何となく後ろをついていくことにした。丁度、ルロクスが飲み物を取りに行きたかったらしく、飲み物の置かれたテーブルへとついた時、俺はテーブルに並べられた様々な食べ物に圧倒されていた。
凄い…料理できれいと思ったのはこれが初めてかもしれない…
「おいしそうなたべもんばっかりだよな〜城に入れてよかった〜」
感激しながら自分の持っている皿に次々と料理を盛っていくルロクス。
あまり盛りすぎると食べられなくてもったいないぞ〜と言いながら俺はフロアの方を見つめた。
今日は城のパーティ。城にいるもの全てがこのパーティに出席しているらしい。もちろんこの目の前にある料理を作っているコックでさえ、交代で出席しているらしいと涼嵐さんは言っていた。
それなら、宮廷魔術師になったルゼルも、この部屋に、フロアにいるはずなんだ…
フロアを見回してルゼルがいないか見てみても…誰が誰やらわからない。
マスクをかけて顔をわからなくしている人やら、隠してはいないけれど絵の具か何かで色を塗った人もいるし…
それに人が多い。
どうしたものやら…
りっぷさんは何処にいても、すぐにわかるんだけどなぁ…
そう思いながらりっぷさんがいるだろう方向を向いてみた。
…りっぷさんの服装はとっても派手だった。
紫色の地毛に赤いタキシードなのだ。
それだけならまだしも、いろんな人に言い寄っては、怒らせているようで、
ぱあぁん!
あ、はっ叩かれてるな…
とまぁ、近くにいなくても、音だけでわかったりする。
ちょっとだけ、りっぷさんのことを不憫に思えるんだが…
そんな時だった。
フロアが一瞬、ザワリとしたのだ。
何なんだろう?とその騒がしい方を向いてみると―――
「あれ…お姫様かなあ?」
ルロクスがその人に見とれながら俺に聞いた。もちろん俺だって知らない…
フロアに現れたのは、水色のドレスを身にまとった少女だった。
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