<アスガルド 神の巫女>

第二幕

神の巫女 × S・O・A・D
〜ふたつのルアス〜




第四話 戦いは4+2


「あいあい、こうです....かっと!」
ドジャーは突然そのダガーを切り裂きニックの方へ投げつけた。
それは見事にニックの腕に命中する。
その拍子にニックは「ぐっ」と言葉を漏らしながら
ルゼルを掴んでいた腕を緩めた。
その拍子にルゼルは腕から逃げ出しジルコン達の方へと走り出す。
「ジルさん!」
「ルゼルっ!早くこっちへ!」
「させるか!わたしの獲物だ!」
「こっちこそさせません!」
「ルゼルを獲物にさせるわけにはいかないな」
アレックスとルセルは同時に空中で十字を切った。
そしてルゼルとニックの間。
そこに二つの魔方陣が浮かび上がり
そして同時に二つの青白いパージフレアの炎が吹き上がった。
「くっ!」
それはルゼルからニックを妨げる形になった。
「チャンス!」
ルロクスは手をくぃっと動かすと
地面に転がっていたオーブがふわっと浮いてルロクスの手に戻ってきた。
そしてルロクスが詠唱と共にオープに魔力を込めると
ルロクスの両手の中でオーブが光り輝いた。
「ファイアビット!」
ルゼルのオーブから多数の炎が飛び出す。
そしてその炎達がニックを襲う。
「ちっ!」
ニックも伊達に99番街で殺人鬼をやってないといった様子で
女と思えない身のこなしで避ける動作をした、
だがファイアビットの多数の炎を全て避けきる事はできず、
二発の炎がニックに直撃する。
そしてその片方の一発はニックの手にもつパンプキンダガーを弾き飛ばした。
「へへっ、やった」
「これで終わりだな」
「そう、終わりですねニックさん」
「カカカッ!お仕置きの時間だ!」
ドジャーが右手を振り落とすと
ニックの足にくもの巣が絡まった。
自由を縛り付けるスパイダーウェブというスキルだ。
「クソォ!」
「さ、ジルンコ。出番だぜ」
「へ、俺?」
ジルコンは少し不思議そうだった。
だがアレックスはルゼルとジルコンの様子を軽く見た後
ドジャーの行動をなんとなくだが理解した。
「ジルコンさん....ですね。いいとこ・・・かな?あげますよ」
「そういうこった」
「ま、トドメって奴ですよジルコンさん」

ジルコンは迷った。
そして言う。
「そんな...。犯人とはいえ身動きのできない女性を殴るわけには...」
ジルコンがチラリとニックの方を見る。
ニックはそれを睨み返した。
それをお構いなしにアレックスが話を続ける。
「ジルコンさん。そこがジルコンさんの優しさだろうけど、
 やっちゃってください。思いっきりね。そしてよく考えてください
 あそこにいるニックは女性ですか?
 それともルゼルさんを殺そうとした酷い人間ですか」
「男を見せなジルンコ。お前はただのお人好しか?
 それとも仲間思いで仲間を傷つける奴は許せないスーパーマンか?」
ジルコンは考える。
そして拳を強く握り締めたと思うと
一歩一歩とニックに近づいた。
そしてニックの目の前で止まった。
「あなたは本当にルゼルを殺す気だったのか」
「フフ、あたり前だろ?じゃなきゃどうしてさらうんだ
 7人の女を殺したワタシにお涙頂戴な動機があると思ってるのか?」
「そうか」
そしてジルコンは拳を構え、
そして思いっきり突き出した。
ルゼルはとっさに目をつむった。
そしてゆっくり目を開けた。
そこにはニックの眼前で止まっているジルコンの拳があった。
「やっぱり今無防備なこの人を殴ることはないかな」
辺りはキョトンとした。
だがそれを尻目にジルコンは拳を下ろして言った。
「俺は最初からルゼルが無事ならそれでよかったんだ。
 俺は人を殴りたいんじゃない。人を守りたくだけなんだ」
最初に噴出したのはルセルだった。
そしてそれにつられてルロクスも笑い出した。
ルゼルはまだキョトンとしている
「ジ、ジルさん....」
「アハハ」
「ジルコンらしいや!」
「なかなか面白い人ですね」
「カカカッ!お人好しもそこまでいくと立派なもんだな!」