<アスガルド 神の巫女>

第二幕

神の巫女 × S・O・A・D
〜ふたつのルアス〜




第三話 こんにちわ殺人鬼


 -ドジャー & ジルコン・ルゼル-

「殺人鬼かぁ.....大丈夫かなぁジルさん」
「大丈夫さ。暗殺者達に比べたらどれだけもマシだと思うぞ〜?」
だが少し心配そうな顔をするルゼル。
見知らぬ所に投げ入れられた上の状況だから無理もない。
ジルコンが口を開いた。
「ドジャーさん。その殺人鬼というのは強いんですか?」
「さぁな。女ばっか狙ってる時点でそんな強くないんじゃねぇか?」
「それならいいんですけど...女性という理由でなくて"か弱い人"を狙っているのな
ら...
 ルゼルも危ないかなと思って」
なるほどなとドジャーは首をならした。
まぁ女を狙う時点でアレやコレやと悪い動機しか思いつかないわけである。
似てるってだけで狙われる理由になりえないだろう。
耳のピアスが揺れる。


ふと
目の前に女性が通った。
それはただの99番街の女性。一般人。
普段から住んでいるドジャーなら一瞬で分かる事だったが、
外から来たジルコンとルゼルにはそれは分からなかった。
いや、それ以上に
誰かに似ていたらしい。
「せ、セルカ?.......セルカがいた!?」
ルゼルはその女性を見るなり
追いかけるように一人で走っていく
「ちょ、待てルゼル!どこへ行くんだ!」
しかしルゼルはジルコンの声も聞こえないかのように行ってしまった。
「言ってるそばから....おいジルンコ。ルゼルはいつもあぁなのか?」
「まぁ....」
ジルコンがため息をついたのをスタートの合図に
ドジャーとジルコンはルゼルを追いかけた。


「あ〜ダメだ!よく考えたら焦って見つかるようならすぐ見つかってるよな」
ルロクスは腕を頭の後で組みながら言った。
「まぁそうですよね、逆に言えば切り裂きニックにとっても
 ルロクスさん達のお仲間さん達とはち会う可能性は低いって事ですよ」
「安心はできないけどな。それよりアレックス君。
 魔力で分かるんだが.......君はもしかしておれと同じ聖職者なのか?」
渋い顔でルセルはアレックスに聞いた。
知識が豊富な分だけ疑問点を見つけやすいのかもしれない。
「いえ、そうですけどちょっと違います
 僕は聖職者であり騎士でもある。聖騎士<パラディン>なんです」
「へぇ〜」
「やっぱり世界観の違いかな。おれ達の世界では二職なんて不可能だからな
 こっちの世界の神様は浮気上手なのかもな」
ルセルは皮肉交じりにそう言った。
そういう話をかき消すようにルロクスがアレックスに話しかける。
「なぁなぁアレックス。やっぱでも騎士ってかっこいいよな!
 オレ知り合い魔術師ばっかだしさ、
 それにオレらの中にも武器使って戦う奴いないからなんか憧れるっていうかさ」
「ルロクス。かっこよさと強さは違う。
 それだからルゼルみたいにスペルが豊富にならないんだ」
ルロクスはギクっとして体と口を止めた。
「でも魔術師もかっこいいですよね!こう〜、バーン!ドカーン!とね」
「だろ〜?やっぱアレックス話分かるじゃんか〜!
 やっぱ好きとかかっこいいとか大事だよなっ!」
「ですよね!お腹を膨らます事も大事ですけど
 おいしいかどうかが大事ですよね!」
話がかみあってるようなかみあってないようなだが
アレックスとルロクスは意気投合してすぐさま肩を組み合ってあるきだした。
その時だった。
悲鳴のような声が聞こえた。


ルセルとルロクスはその声を聞くなりピンときたのか
一目散に走り出した。
それにアレックスも追いかける。
1つ、
2つと街角を曲がる。
そしてその先で三人は足を止めた。
そこには二人の人。
片方は魔術師。
もう片方はフードを大きくかぶった者だった。
フードを深くかぶった者は魔術師の首に腕を巻きつけてを捕まえる形をとっている。
そして片手には血のついた包丁パンプキンダガー。
一目でニック・ザ・カッターだと分かった。
そしてもうひとり、
捕らわれている女性であろう魔術師
「「ルゼル!」」
「ルロクス!ルセル!」
「え?あれがルゼルさん?じゃぁあの女性のような方は男の人なんですか?」
アレックスは目を見開いた。
そして綺麗な男性もいたものだと思った。
あれなら女性と思われて襲われてもしょうがない。
「フフフ、邪魔が入ったね」
ニックは不気味なか細い声でそう言った。
「ルゼルをはなせっ!」
と言って離してくれるものじゃないだろう。
ニックは今ルゼルを人質にとっている形である。
まぁアレックス達がこなければその必要もなく、
いつもの"行事"を行って終わりだったのだろうが...。


「うぉあ!なんじゃこりゃ、今どうなってんだ!?」
「ルゼル!」
逆の路地から現れたのは
ドジャーと修道士だった。
「ジルさん!」
ルゼルがジルコンに声をあげるが
すぐにニックはルゼルの口を塞いだ。
「ジルコン!ルゼルが!」
「」
「カッ!最悪の状況みたいだな」
「いえ、ドジャーさんある意味ラッキーですよ」
「あん?なんでだアレックス」
「ルセルさんにルクロスさんにジルコンさんに僕とドジャーさん
 5対1ですよ。もうルゼルさんごとドカーン!ってのはどうですか?」
「カカカッ!ナイスアイデァ!」
「ちょ、」
「何考えてんだよあんたら!」
「「冗談(だよ)(ですよ)」」
「「「.....」」」」
「フ、面白い奴らだ」
そう言ってニックは深くかぶっていたフードを外した。
その下から出てきた顔は....
「女!?」
「あれはさっきルゼルが着いていった....」
「アハハ、女を狙うってだけでどいつもこいつも勝手に男だと想像するからね
 みんな女にはてんで警戒しない。こっちは楽でいいよ、こういう事する時はね...」
ニックはそう言ってパンプキンダガーをルゼルに近づける。
「カッ!ニックって名前も偽名かよ」
「殺人鬼には変わりないみたいですけどね」
「てめっ!ルゼルを離せよ!」
「離すのはあなた達よ、さっさと武器を捨てなさい」
「そんな事....」
「ルロクス、ここはいう事を聞いておこう。ルゼルの命がなにより優先だ」
「だけどルセルっ....」
「捨てるんだ」
ルセルが先陣をきってスタッフを捨てた。
地面に転がるスタッフを見ると
ルロクスを仕方なくオーブを地面へ転がした。
アレックスも槍を地面に突き刺す。
ドジャーもダガーを捨てていく。
それを見てジルコンはギョッとした。
「ってドジャーさん....どれだけ持ってるんですか...」
「ん?」
ドジャーの足元には数十本のダガーが山積みになっていった。
まるで食べ終わった枝豆の山のように。
そしてドジャーが最後のダガーを腰から外して手にとった。
「ほら、盗賊。さっさと捨てろ」