<アスガルド 神の巫女>

第二幕

第七章 サラセンの隠された場所



第十一話 呪いの解除



「呪い、解けるんだ?」
「うんうん!その道の達人を見つけたから連れてくるって!」
ルロクスの問いにルゼルが興奮気味に言った。
二、三日たった今日、やっと連絡が繋がった“その道の達人さん”を連れてくるとのことで、キュイーブルさんはウィザードゲートセルフで迎えに行っていた。
やっと解けるのか…
「キュイもやっと連絡ついたってホッとした顔をしてました。
迷惑かけちゃったかなぁやっぱり…」
ルゼルが申し訳なさそうな顔をして言った。
それを聞いてルロクスが『そういやさぁ』とルゼルに尋ねた。
「キュイーブルの名前をルゼルって略して呼んでるじゃん?
でもこの前そう呼んでた人に怒ってたみたいだし、
なんでかなって思ったんだけどさぁ」
「あ〜…えっと、
キュイって何故か、限られた人にしか略称で呼んでいいって言ってないみたいで…
女性には呼ばせないみたいなんだよ」
「ふーん…ルゼルも女なのに?」
「うん、そうなんだよねぇ。
僕が女だって知ってるはずだし、久々に会ってキュイって呼んだら怒られるかなって思ったんだけど…」
「…やっぱり女だってわかってたんだな…」
ルロクスが納得行った顔をしてみせる。
「ルゼルが女の子だって知ってるのは俺達だけだと思ってたよ」
俺がそういうと、ルゼルは苦笑いをした。
「キュイ以外でお仕事一緒にした方には言ってませんよ?
キュイにだって、言う気なんて全くなかったんですから。」
ルゼルは申し訳なさそうに話し出す。
「キュイは僕を気に入ってくれてたみたいで…
ある時、キュイが秘密にしていることをそっと僕に教えてくれたんです。
キュイの弱点って言えばいいのかな…そんな秘密なんですけど、
僕に言ってくれて…
それから打ち解けていろんな話ができる様になって。
でも僕は旅を急いでいたので…お仕事終わってすぐに…えっと…
次の町に早く行きたかったから早朝に宿を出まして…
せめて置き手紙をって思って色々書いて…
僕が秘密にしていたこと−−−僕が女だってことも書いておいたんです。
それからずっとお会いしてませんでしたから…」
「朝逃げだな…」
ルロクスがぼそりと呟くように言う。
今までの仕事終了時の行動を聞いていると、早朝出発はルゼルがよく使う手のようだ。
しっかり置き手紙を置いていくのもルゼルらしいと言える。
やられた方は寝耳に水で、たまったもんじゃないが…
「でもさ、そんな安直に自分のこと言っていいのかよ…」
「キュイにとって重大な秘密だったのに僕なんかに教えてくれた…
そう思うと僕も秘密のままにしてるのが申し訳なく思って」
「ルゼルらしいよ」
俺が笑いかけるとルゼルは照れたように笑って『ありがとうございます』と言った。
「キュイは顔が広いし、きっと良い呪い解除師さんを連れてきてくださいます」
嬉しそうな笑顔のルゼル。
『でもそういえば…』と、何かを思い出したようで、首を傾げながらこう言った。
「キュイが気になることを言ってたんですよねぇ…
その来て頂く人はスオミで研究している方で、
僕もその人のことは知ってるはずだって言うんですよねぇ…」
「?
知り合いとかか?」
悩んでいる様子を見せるルゼルに俺が問いかけると、『どうなんでしょう…』と悩みながら答える。
「思い当たる人はいないんですけどねぇ…」
「まぁ来てみればわかるじゃん?来てのお楽しみってところだな」
俺の部屋で話しながらキュイーブルさんを待っていた。
しばらく待っていると軽くノックする音がした。
そしてすぐに扉が開かれる。
「お連れしたよ〜!さ、どうぞこちらへ」
恭しく案内をし、部屋へ招き入れるキュイーブルさん。
連れてきた相手は―――
「…れ、レスティさん?」
スオミの町で薬屋を営んでいる女性…というかおばあさん、レスティさんが俺達の前に立っていた。